「あごがカクカクする」「口を大きく開けると痛い」「朝起きると顎が開きにくい」

こうした症状を子どもが訴えたとき、多くの保護者の方は「子どもにそんなことがあるの?」と驚きます。

しかし顎関節症(がくかんせつしょう)は、成人だけの問題ではありません。

小学生・中学生の子どもにも起きており、歯並びや口腔機能の問題と深くつながっています。この記事では、子どもの顎関節症の症状・原因・成長期にできるアプローチを、エビデンスとともに詳しく解説します。

01|子どもの顎関節症の実態——思ったより多い

📊 小児・思春期の顎関節症の有病率

Nilsson IM et al.(2007年, Acta Odontologica Scandinavica)の研究では、
12〜18歳の青少年の約7〜15%に何らかの顎関節症(TMD)の症状があることが示されている。

また Könönen M & Nyström M(1993年)の研究では、
13歳児の約10%に顎関節音(クリック音)が認められた。

子どもの顎関節症は見逃されやすく、「成長とともに自然に治る」と
放置されるケースが多いが、適切な時期に対処しないと
成人後に慢性化するリスクがある。

02|顎関節の構造・・・なぜ「カクカク」するのか

顎関節は、下顎骨の先端(下顎頭)が側頭骨のくぼみ(関節窩)に収まっている関節です。

両者の間には「関節円板(かんせつえんばん)」と呼ばれるクッションのような軟骨組織があり、スムーズな顎の動きを可能にしています。

顎関節の構造(図解)

側頭骨(頭蓋骨)
  ↓
関節窩(くぼみ)
  ↓
【関節円板】← ここがずれると音・痛みが出る
  ↓
下顎頭(下顎骨の先端)

正常:口を開けると下顎頭が前方に滑り出し、
   関節円板も一緒に動く

異常(円板前方転位):
関節円板が前にずれた状態で固定される
→ 口を開けるとき円板が下顎頭に乗り越える → カクッと音
→ 円板がずれたまま → 開口制限・痛み

03|子どもの顎関節症の主な症状

顎関節症の3大症状

① 顎関節音(かんせつおん)
口を開けるとき・閉じるときに「カクッ」「コキッ」「ジャリジャリ」という音がする。
関節円板のずれによって起きる。痛みを伴わないこともある。

② 開口障害(かいこうしょうがい)
口が大きく開かない。目安として指3本(約40mm)が縦に入らない場合は要注意。
朝起きたときに特に開きにくいことが多い。

③ 顎関節痛・咀嚼筋痛
顎を動かすと顎関節や耳の前が痛む。
食事中・あくびのとき・大きく口を開けたときに出やすい。
頭痛・首の痛み・肩こりとして現れることもある。

04|子どもの顎関節症の原因——歯並び・噛み合わせとの関係

原因① 噛み合わせのズレ

上下の歯が正しく噛み合っていないと、顎関節への荷重が左右で不均等になります。

噛み合わせが深すぎる(過蓋咬合)・横にずれている(交叉咬合)・前歯が噛み合わない(開咬)などの不正咬合が、顎関節への慢性的な偏荷重を引き起こします。

原因② 片側噛みの習慣

食事中にいつも同じ側で噛む「片側咀嚼」は、噛む側の顎関節に過剰な圧縮負荷をかけます。

反対側は噛む刺激が少ないため発育が不均等になり、顎関節の左右差・下顎骨の回旋変形につながります。

原因③ 歯ぎしり・食いしばり

睡眠中の歯ぎしり(ブラキシズム)や日中の食いしばりは、顎関節・顎周囲筋肉に過剰な負荷をかけます。

子どもの歯ぎしりは成長に伴って改善することもありますが、噛み合わせの問題がある場合は顎関節症に移行するリスクがあります。

口呼吸や睡眠の質の低下が歯ぎしりを誘発することもあります。

📊 歯ぎしりと顎関節症の関係

Lobbezoo F et al.(2012年, Journal of Oral Rehabilitation)の研究では、
睡眠中の歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)が
顎関節症・顎関節痛の重要なリスク因子であることが示されている。

子どもの歯ぎしりが続く場合、睡眠の質・口腔機能・
噛み合わせの評価を合わせて行うことが重要。

原因④ 姿勢・スマホの影響

頭部前傾姿勢(スマホ首)は、顎関節への圧力を変化させます。

頭が前に出ると下顎が後退し、顎関節への圧縮負荷が増大します。

長時間のスマホ・タブレット使用が、子どもの顎関節症増加の一因と考えられています。

原因⑤ 口腔機能の問題

口呼吸・低位舌・異常嚥下癖は、顎周囲の筋肉バランスを崩します。

舌骨を支える筋肉群(舌骨上筋・舌骨下筋)のアンバランスが顎関節への負荷を変化させ、顎関節症のリスクを高めることがあります。

05|放置するとどうなるか——子どもの顎関節症のリスク

子どもの顎関節症を放置したときのリスク

短期的なリスク
・痛みによる食事困難・栄養摂取への影響
・開口障害による歯科治療の困難
・頭痛・肩こりの慢性化
・集中力・学習能力への影響(睡眠の質低下を通じて)

長期的なリスク
・関節円板の変性・穿孔(長期間のずれによる組織ダメージ)
・下顎頭の骨吸収・変形
・顔の非対称の進行
・成人後の慢性TMDへの移行

特に成長期の顎関節は軟骨組織が残っており、
適切な介入で改善できる可能性がある。
成長が止まると、対処できる範囲が大幅に制限される。

06|子どもの顎関節症へのアプローチ

① 噛み合わせ・歯並びの改善

顎関節症の根本にある噛み合わせのズレを整えることが最も重要です。

特に交叉咬合(横のズレ)は早期介入で改善できることが多く、放置すると顎の非対称成長が進みます。

成長期のうちに顎の発育を整え、左右均等な噛み合わせを確立することが、顎関節への慢性的な偏荷重を解消する根本的なアプローチです。

② 口腔機能の改善(マイオブレース治療)

口呼吸・低位舌・異常嚥下癖を改善することで、顎周囲の筋肉バランスが整います。

舌の正常な位置への回復・口輪筋の強化・正しい嚥下パターンの確立が、顎関節への偏荷重を緩和します。

③ 日常生活での対処

顎関節症の症状がある場合、日常でできること

✅ 大きく口を開ける動作を避ける(あくびは顎を支えながら)
✅ 硬い食べ物を避け、一時的に柔らかいものを中心に
✅ 頬杖をつかない
✅ うつ伏せ寝を避ける
✅ スマホ・タブレットの使用時間を制限し、姿勢を意識する
✅ ストレス・緊張場面での食いしばりに気をつける

これらは対症療法であり、根本的な原因(噛み合わせ・口腔機能)の
改善と並行することが重要。

こんな症状があれば相談を

子どもの顎関節症チェックリスト

□ 口を開けるときカクッ・コキッという音がする
□ 大きく口を開けると顎が痛い・詰まる感じがある
□ 朝起きたときに口が開きにくい
□ 顎・耳の前・こめかみが痛むことがある
□ 頭痛・肩こりを頻繁に訴える
□ 歯ぎしり・食いしばりの癖がある
□ 片側だけで噛む癖がある
□ 口呼吸・お口ポカンが続いている
□ 前歯の中心がズレている・顔の左右差がある
□ スマホを長時間同じ姿勢で使っている

3つ以上:専門家への相談をおすすめします

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